
それでは,「よく生きる」ために,私たちはどのように選択をしていけばよいのでしょうか。
皆さんにアドバイスしたいのは,次の二つのことです。
一つは,選択するための基準となるべき基本的な考え方や長期的な目標が必要だということです。入学式の式辞で,「第一に,しっかりとしたビジョン、将来の構想を描いてほしい」と求めたのも,そのような理由からです。
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の中に、次のような場面があります。
「教えてくださいな。私はこれからどっちのほうへ歩いて行けばいいの?」
「それは,おまえがどこに行きたいかによるな」猫は言いました。
「私はどこだってかまわないのだけど」アリスは言いました。
「なら,どっちのほうに歩いたって同じじゃないか」猫は言いました。
皆さんは,自分の行きたいところが決まっているでしょうか。そして,そこに着くまでの地図がしっかりと描かれているでしょうか。「ビジョン(長期的な目標,将来の構想)を持って,自分の進むべき道を選択していくこと」は,若い皆さんにぜひ身につけてもらいたい習慣です。
二つめは,「勇気を持って前に進む」ということです。人生においては,いつも自分の選択が正しいと確信できるわけではありません。皆,迷いながら自分の進むべき道を選んでいるのです。じっくり納得するまで考えることは大事ですが,迷いながらも一度決めたならば「勇気を持って前に進む」ことはもっと大切です。
「進路の手引き」が,皆さんがしっかりとしたビジョンを持って進むべき道を選択し,勇気を持って前に進むための指針となれば,これにまさる喜びはありません。(終わり)